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Nov 18, 2009 [Clipping News]

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1.新型インフルで京都の女性死亡 40代、心臓に持病
2.新型インフル:ワクチン接種後死亡10人に 新たに2件
3.新型ワクチン、県内初60代男性死亡 接種2日後、持病が原因か/栃木
4.肺での新型インフルウイルス増殖確認 長野赤十字病院
5.抗がん剤投与後に12人死亡 肝不全や脳症、副作用か
6.肺炎薬に耐性持つ腸炎菌を初確認 国内の強毒株で
7.抗生物質の多用で耐性菌が増加、欧州専門家
8.恐怖を知らない子どもは、大人になって犯罪者になりやすい 米医学誌
9.病院そばに第二のわが家 小児患者抱える家族支援
10.心不全とCOPDが併存、どうやって治療する?
11.炎症性腸疾患に対するチオプリン投与、リンパ増殖性疾患のリスクが増大
12.新規GLP-1アナログ製剤liraglutide、肥満者の体重が減少、糖尿病前症の抑制効果も
13.【症例報告】呼吸器異常例は、呼吸苦、SpO2低値、消化器症状、白血球の
顆粒球増多が特徴的
14.プレスリリース
1) 理化学研究所、潰瘍性大腸炎の発症に関連する3つの遺伝子を発見
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1.新型インフルで京都の女性死亡 40代、心臓に持病
共同通信社2009年11月19日

 京都府は19日、新型インフルエンザに感染した同府京丹後市の40代の女性が同日死亡したと発表した。心臓に基礎疾患(持病)があった。
 府によると、女性は18日朝、発熱で医療機関を受診したが、簡易検査は陰性のため帰宅。直後に自宅で倒れ、搬送先で新型感染が確認された。


2.新型インフル:ワクチン接種後死亡10人に 新たに2件
毎日新聞社2009年11月19日

 厚生労働省は19日、新型インフルエンザのワクチン接種後の死亡報告が、新たに2件あったと発表した。死亡例はこれで計10人。2人とも基礎疾患があった入院中の高齢者で、主治医は接種と死亡の因果関係が強く疑われるケースではないと判断しているという。
 死亡したのは、慢性腎不全、心不全などを患っていた熊本県の80代男性と、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患などがあった大分県の70代女性。接種直後に副作用症状が出ていないことなどから、主治医は、ともに持病の悪化による死亡の可能性が高いとしている。


3.新型ワクチン、県内初60代男性死亡 接種2日後、持病が原因か/栃木
下野新聞社2009年11月19日

厚生労働省は18日、新型インフルエンザの国産ワクチン接種を受けた本県在住の60代男性が、接種2日後に死亡したと発表した。新型ワクチン接種後の死亡事例の報告は本県で初めて、全国では7例目。男性は肝細胞がんなどの持病があり、1カ月前から肝機能低下による脳症で入院していた。同省は男性の死亡は持病の悪化によるものとみられ、ワクチン接種が死亡の原因ではないとしている。
 同省によると、男性は13日夕に入院中の県内の病院で新型ワクチンの接種を受けた。15日未明になって男性の腹部が膨れ上がり、血性腹水が認められたため腹腔内出血(がんの破裂の疑い)と診断された。男性は同日午前8時すぎに死亡した。
 男性は肝機能低下による脳症が改善傾向にあったため、今週末に退院する予定だった。がん破裂の危険性は以前から指摘されており、同省は「死亡は持病の進行によるもの」とみている。ワクチン接種との因果関係は、専門家の意見を踏まえて評価するとしている。
 県保健福祉部は、今後も県内医療機関に対し接種後の副反応報告への協力を求めていく。同部は「県民の皆さまには、正確な情報に基づく冷静な対応をお願いしたい」と呼び掛けている。


4.肺での新型インフルウイルス増殖確認 長野赤十字病院
信濃毎日新聞社2009年11月19日

 基礎疾患(持病)があり、新型インフルエンザに感染
して亡くなった患者の肺で、ウイルスが増殖していた様
子を長野赤十字病院(長野市)の羽田悟検査部長らが1
8日までに解剖で確認した。同病院によると、新型イン
フルで死亡した人の解剖例の報告は全国でも珍しい。持
病などで免疫力が弱まっている場合、鼻やのどだけでな
く肺でもウイルスが増殖し、重症化する恐れがあること
をあらためて裏付ける内容。19日に東京都内で開く日
本病理学会で発表する。
 同病院は家族の了承を得て、新型インフルに感染して
8月に呼吸不全で死亡した県内の30代男性の遺体を解
剖。肺胞を包み、肺胞中の酸素と肺胞に接する血管内の二酸化炭素を交換する肺胞上皮の細胞などでウイルスが増殖していたことを確認した。肺全体の腫れや出血も目立っていたという。
 羽田部長によると、男性はウイルスにより肺胞内に体液が漏れ出すなどし、酸素と二酸化炭素の交換が妨げられ、血液中に十分な酸素が行き渡らずに呼吸不全に陥ったとみられる。
 ただ、季節性インフルエンザに感染して重症化した場合に多い細菌感染による合併症は確認されず、羽田部長は「新型インフルのウイルスのみが影響して肺炎を引き起こしたのではないか」とみている。
 厚生労働省によると、17日現在で新型インフルエンザの疑いも含めた国内の死者は65人。亡くなった患者の解剖例について、同省は「病院などに報告を求めていないので分からないが、これまでに1、2例あったと聞いている」としている。
 感染症に詳しい東海大医学部の永倉貢一講師は「新型でも季節性でも、インフルエンザウイルスは肺や肺胞に入ることはあるが、基本的に免疫力があれば増殖しにくい」と説明。免疫力が低い乳幼児や基礎疾患のある人などにいち早いワクチン接種が必要-と話している。


5.抗がん剤投与後に12人死亡 肝不全や脳症、副作用か
産経新聞社2009年11月19日

 厚生労働省は18日、進行した肝細胞がんや腎細胞がんの治療薬「ネクサバール錠」(一般名ソラフェニブトシル酸塩)の投与後に、36人が肝不全や肝性脳症になり、うち12人が死亡したと発表した。昨年4月の販売開始から今年10月末までの報告数で、この間の使用者は約5500人。
 厚労省によると、36人のうち34人は肝細胞がんの患者。死亡した12人のうち4人は投与から4~5日後に死亡しており、薬の投与との関連が疑われるという。同省は投与の際は肝機能検査などをし、異常があった場合には投与を中止するよう注意を呼び掛けている。
 製造販売元のバイエル薬品に対し、使用上の注意の「重大な副作用」の項目に肝不全と肝性脳症に関する注意を盛り込むよう、添付文書の改訂を同日付で指示した。



6.肺炎薬に耐性持つ腸炎菌を初確認 国内の強毒株で
中日新聞社2009年11月19日

北米などで院内感染が問題となっている腸炎原因菌の強毒株が、肺炎の治療などに広く使われる抗生物質に耐性を持っていることを、愛知医大病院感染制御部の三鴨廣繁教授らの研究グループが国内で初めて確認した。三鴨教授は「国内でも腸炎の院内感染、重症化の危険が高まっている」と対策の強化を呼びかけている。
 菌は「クロストリジウム・ディフィシル(CD)」。強毒株は、2005年に岐阜県内で見つかったのをはじめ、国内で十数株見つかっているという。
 三鴨教授によると、これまでCDは毒性が弱かった上、高齢者施設などで感染があっても、肺炎など呼吸器感染症の治療として使われた抗生物質などが、副次的にCDを撃退していたと推測されるという。同抗生物質が効かない強毒株が国内で見つかったことで、院内感染拡大の危険が高まったとして「下痢といっても、注意して感染症対策を取る必要がある」と話している。
 典型的な症状は下痢で、通常は適切な抗生物質の投与により1週間ほどで回復する。北米では00年ごろから高齢者施設などで院内感染が急増。重い合併症や死亡に至るケースも増えているという。


7.抗生物質の多用で耐性菌が増加、欧州専門家
AFP News2009年11月19日

抗生物質の過度な使用により、抗生物質に耐性のある細菌が欧州のみならず世界中で増加し、死者が出る、高額な医療費がかかるといった事態を招いている。このような報告が18日、スウェーデンのストックホルム(Stockholm)で開かれた専門家会議で発表された。
 欧州疾病予防管理センター(European Centre for Disease Prevention and Control、ECDC)主催の欧州抗生物質啓蒙(けいもう)デー(European Antibiotics Awareness Day)に出席した専門家らは、超耐性菌の出現により、世界の保健の根幹が脅かされていると警告した。
 この件を担当するECDCの専門家はAFPに対し、「すべての治療に対する耐性を持つ細菌が出現し、われわれは古い毒性のある抗生物質を使うか、書類上でしか知らない薬剤を組み合わせて使うことを強いられている」と語った。
 別の専門家は、「効力を持つ抗生物質がなければ、手術、移植、集中治療といった現代医学の治療が不可能になる」と指摘する。
■世界に拡大する超耐性菌
 ECDCはこのような状況は、抗生物質の使用量が他地域に比べて多い南欧や東欧で特深刻だと強調した。
 ECDCの推計によると、欧州連合(EU)加盟国内で年間約2万5000人が耐性菌によ死亡しており、これは自動車事故での死者数の半数以上にあたる。
 また、超耐性菌の出現により、欧州では年間15億ユーロ(約2000億円)の費用がかかり、うち9億3000万ユーロ(約1240億円)は病院が負担している。
 さらに、超耐性菌の影響を受けているのは欧州だけではないという。公式統計によると、米国では超耐性菌により数万人が死亡している。抗生物質がより手に入りやすく、処方せんすら必要のないこともある貧困国では状況はさらに悪いと専門家らはみている。
 イタリア、スペイン、ポルトガルなど欧州9か国では、2003年にはわずか2%だった大腸菌感染率が前年、25%を超えた。大腸菌は最もよく知られた耐性菌だ。


8.恐怖を知らない子どもは、大人になって犯罪者になりやすい 米医学誌
AFP News2009年11月19日

通常の恐怖反応を示さない子どもは、大人になると犯罪を犯しやすくなるとする研究結果が、16日の米医学誌「American Journal of Psychiatry」に発表された。
 研究チームは、約1800人の3歳児を対象に、大音量の短い不快音と普通の音とを聞かせる実験を行った。このとき、恐怖への反射作用である汗の分泌などを測定することで、「恐怖条件付け」を調べた。
 そして20年後、被験者の裁判記録を調べた。
 その結果、被験者のうち23歳までに重罪を犯したのは137人で、このなかに3歳時の実験で正常な恐怖反応を示した者は1人もいなかった。
 一方で、23歳までに犯罪を犯したことがないグループでは、実験では正常な恐怖反応を示していた。
 研究者らは、大人になって犯罪を犯すようになる傾向には、社会的な条件付けや民族性や性差よりも、脳の特定の部位が正常に機能していないことによる方が大きいと仮定。神経系の発達が犯罪に部分的に関連しているとすれば、犯罪を防止し対処する取り組みとして、早期の治療行為が今まで以上に頼りにされるだろうとしている。
 たとえば、妊婦の喫煙、飲酒、ドラッグの使用を減らすことを目的とした出産前プログラムを実施して15年後には、未成年者の非行が減ったとする調査がある。
 また、3~5歳のときに栄養バランスの良い食事をして多くの運動をし、精神的にも刺激を受ける生活を送っていた子どもは、6年後にはそうでなかった子どもに比べて脳が良く機能し、大人になってからの犯罪率も35%減少したという統計もある。


9.病院そばに第二のわが家 小児患者抱える家族支援
共同通信社2009年11月19日

 高度の専門医療を受けるため、自宅から遠く離れた病院に入院するわが子の見舞いや、付き添いに訪れる家族を支援する施設「ホスピタル・ホスピタリティ・ハウス」が各地で増えている。病院のそばに安価で長期滞在でき、“第二の家”として家族の精神的、経済的負担を和らげるケアの一端を担っている。
 日本ホスピタル・ホスピタリティ・ハウス・ネットワーク(事務局・東京)によると、発祥は米国で、日本では1980年代後半から設立され、現在約130施設ある。同ネットは「病院近くのわが家」との日本語訳を使う。
 大阪府吹田市の国立循環器病センターの向かい側にある「おおさか・すいたハウス」。寝室18室と共有の台所やリビングなどがあり、1泊千円で最大2週間滞在可能。
 堺市の福田一真さん(31)は、心臓疾患の長女(4)の手術のため10月上旬から妻、1歳の長男と2週間ずつ2度利用、計約1カ月滞在した。「すぐ病院に飛んでいけるし、ほかの利用者と病気の話ができて気持ちも楽になった」。


10.心不全とCOPDが併存、どうやって治療する?
日経メディカル2009年11月19日

受容体に選択的な薬剤の使い分けが必要
動脈硬化や狭心症などの心血管疾患や、骨粗鬆症と同時に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症している場合、どちらも治療することが必要だ。しかし、2つの疾患の治療薬の作用が相反するときは、その使い分けの判断に迷うケースもある。
COPDが心筋梗塞などの他の疾患を引き起こす、またはCOPDが他の病態を悪化させる可能性が示唆されるようになり、今まで以上にCOPDの治療が重要になってきた。しかし、併存する疾患の治療において、それぞれの治療薬が相反する作用を持つとなると、どちらを優先させるべきか、判断に迷う医師も少なくない。
 中でも判断が難しいのは、心不全や不整脈などの心血管疾患を持つ患者がCOPDを併発している場合。COPDの治療にはβ2刺激薬、心血管疾患の治療にはβ遮断薬と、正反対の作用の薬剤を用いるが、COPD患者へのβ遮断薬の使用は、気道攣縮のため禁忌とされているためだ。
 「利尿薬でコントロールできる程度であれば良いが、明らかに重症の心不全であれば患者の命にかかわるので、β遮断薬を使用する必要がある。COPDがあっても、心不全の治療をおろそかにしてはいけない」と信州大呼吸器・感染症内科の藤本圭作氏は話す。
受容体に選択的な薬剤の使い分けが必要に
 「最近では、心血管系に作用するβ1刺激薬と、気管支に作用するβ2刺激薬というように、受容体に選択的な薬剤を使い分ければ、大きな影響はないといわれている」(藤本氏)。
 日本呼吸器学会が発行したCOPDのガイドラインでも、「心血管系の合併症を持つCOPD患者に心臓選択性のβ遮断薬を使用しても、副作用や気流閉塞の悪化がほとんど起こらない」と明記されており、治療に必要な際には、心臓選択性のβ遮断薬を少量から用いることを推奨している。
 またガイドラインでは、専門医と連携しながら、プライマリケア医が主体となって患者の病態管理を行っていくことも求めている。「非専門医は不安があるかもしれないが、患者の重症度に応じて、呼吸器科医と連携しながら治療法を選択していくのが良いのではないか」と藤本氏は話す。
 なお、ガイドラインでは、心血管疾患のほかにも骨粗鬆症、消化器疾患、抑うつなどの「全身併存症」と、肺高血圧症、肺炎、気胸、肺癌などの「肺合併症」の安定期の治療・管理について、注意すべき点をまとめている(表1)。例えば骨粗鬆症の患者に対しては、COPDを合併している場合も、合併していない場合と同様にビスフォスフォネート製剤による薬物療法を推奨すると同時に、喫煙はCOPDと骨粗鬆症の両方のリスクファクターであるため、より強く禁煙を推奨すべきとしている。
表1 ガイドラインによる安定期における全身併存症の管理の例
・COPD患者には消化性潰瘍や胃食道逆流症などの消化器疾患の合併率が高いため、ヒスタミンH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬の併用が有効である。
・骨粗鬆症を合併している場合は既存の治療法に準じて治療を行う。 
・骨粗鬆症においても喫煙がリスクファクターであるため、より強く禁煙が推奨される。


11.炎症性腸疾患に対するチオプリン投与、リンパ増殖性疾患のリスクが増大
CareNet2009年11月19日

炎症性腸疾患の患者に対するチオプリン系薬剤の投与は、リンパ増殖性疾患のリスクを増大させることが、フランスParis第6大学(Pierre et Marie Curie)Saint-Antoine病院消化器病学の Laurent Beaugerie氏らが実施したコホート研究(CESAME試験)で明らかとなった。Crohn病や潰瘍性大腸炎は原因不明の慢性炎症性消化管疾患であり、寛解を維持するための免疫抑制療法としてアザチオプリンやその代謝産物である6-メルカプトリンが推奨されている。免疫抑制療法としてチオプリンを投与された臓器移植患者では、Epstein-Barr(EB)ウイルスとの関連でリンパ増殖性疾患の発症リスクが増大することが知られている。Lancet誌2009年11月7日号(オンライン版2009年10月19日号)掲載の報告。
約2万例を対象とした前向きの観察的コホート研究
CESAME(Cancers Et Surrisque Associe aux Maladies inflammatoires intestinales En France)試験の研究グループは、炎症性腸疾患に対するチオプリン投与によるリンパ増殖性疾患のリスク増大についてプロスペクティブな観察的コホート研究を行った。
フランス全域の680名の消化器専門医から1万9,486例の炎症性腸疾患[Crohn病:1万1,759例(60.3%)、潰瘍性大腸炎:7,727例(39.7%)]が登録され、観察期間中の免疫抑制療法、がんの発現、死亡などの情報が報告された。これらのデータを基に、チオプリンの投与状況とリンパ増殖性疾患のリスクについて評価した。フォローアップ期間中央値は35ヵ月であった。
発症リスクが5倍以上に、若年患者における利点は損なわれない
ベースライン時にチオプリンの投与を受けていたのは5,867例(30.1%)で、中止していた症例が2,809例(14.4%)、投与歴のない症例が1万810例(55.5%)であった。23例が新たなにリンパ増殖性疾患と診断され、そのうち1例がHodgkinリンパ腫、22例は非Hodgkinリンパ腫であった。
リンパ増殖性疾患の発症率は、チオプリン投与例では1,000人年当たり0.90、中止例では0.20/1,000人年、非投与例では0.26/1,000人年であり、投与例において有意に高かった(p=0.0054)。チオプリン投与例におけるリンパ増殖性疾患の発症リスクは、非投与例よりも5倍以上高かった(多変量補正ハザード比:5.28、p=0.0007)。
著者は、「チオプリンを投与された炎症性腸疾患患者では、リンパ増殖性疾患のリスクが増大していた」と結論し、「今回の結果を外挿すると、チオプリンを10年間投与されている若年患者のリンパ増殖性疾患の絶対累積リスクは1%未満と低いままであり、この薬剤のリスク-ベネフィット比の利点を損なうものではない。高齢者や無期限の治療については、それぞれの専門試験が必要である」と指摘している。
Beaugerie L et al. Lymphoproliferative disorders in patients receiving thiopurines for inflammatory bowel disease: a prospective observational cohort study. Lancet. 2009 Nov 7;374(9701):1617-25. Epub 2009 Oct 19.


12.新規GLP-1アナログ製剤liraglutide、肥満者の体重が減少、糖尿病前症の抑制効果も
CareNet2009年11月19日

新たなグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)アナログ製剤であるliraglutideは、肥満者の体重を減少させて肥満関連リスク因子を改善し、糖尿病前症を低減することが、デンマークCopenhagen大学生命科学部のArne Astrup氏らNN8022-1807 Study Groupが実施した無作為化試験で明らかとなった。ヨーロッパでは過去20年間で肥満者が3倍に増え、成人の約半数が過体重だという。liraglutideはヒトGLP-1と97%の構造的相同性を持つアナログ製剤で、半減期が約13時間と長いため1日1回皮下注で治療が可能。用量依存性に体重を減少させ、HbA1cの低減作用を持ち、膵β細胞機能および収縮期血圧を改善することが確認されており、2型糖尿病と肥満の治療薬として期待されている。Lancet誌2009年11月7日(オンライン版2009年10月23日号)掲載の報告。
4種類の用量群、プラセボ群、orlistat群の6群を比較する二重盲検試験
NN8022-1807 Study Groupは、liraglutideが2型糖尿病を有さない肥満者の体重に及ぼす影響および耐用性について検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。
2007年1~9月までに、ヨーロッパの8ヵ国19施設から18~65歳の肥満者(BMI 30~40kg/m2)564人が登録された。これらの肥満者が、liraglutideの4種類の用量を1日1回皮下注する群[1.2mg群(95人)、1.8mg群(90人)、2.4mg群(93人)、3.0mg群(93人)]、プラセボ群(98人、1日1回皮下注)あるいは承認済みの抗肥満薬である消化管リパーゼ阻害薬orlistat 120mgを投与する群(95人、1日3回経口投与)のいずれかに無作為に割り付けられた。
被験者は、2週間のrun-in期間と20週の試験期間中は1日500kcalの低エネルギー食を摂り、身体活動の増強の指導を受けた。主要エンドポイントはintention-to-treat解析による体重の変化とした。試験完遂者は引き続き84週のオープンラベル試験に登録された。
用量依存性に体重が減少、高用量ではorlistatと有意差が、降圧作用や糖尿病前症抑制効果も
プラセボ群に比べ、liraglutide 1.2mg群(p=0.003)およびliraglutide 1.8~3.0mg群(p<0.0001)は有意に体重が減少し、orlistat群との比較でもliraglutide 2.4mg群(p=0.003)およびliraglutide 3.0mg群(p<0.0001)の体重減少は有意差が認められた。
減少した体重の平均値は、liraglutide 1.2mg群が4.8kg、1.8mg群が5.5kg、2.4mg群が6.3kg、3.0mg群が7.2kgであったのに対し、プラセボ群は2.8kg、orlistat群は4.1kgであった。liraglutide群はプラセボ群よりも体重が2.1~4.4kg減少した。
体重が5%以上減少した被験者の割合は、liraglutide3.0mg群が76%(70人)であったのに対し、プラセボ群は30%(29人)、orlistat群は44%(42人)であった。liraglutide群はすべての用量で血圧が低下し、1.8~3.0mg群では糖尿病前症が84~96%低減した。
liraglutide群はプラセボ群に比べ悪心・嘔吐の頻度が高かったが、有害事象の多くは一過性で治療中止に至るものはまれであった。
著者は、「肥満者に対する20週にわたるliraglutide治療は、耐用性が良好で体重を減少させ、一定の肥満関連リスク因子の改善効果や糖尿病前症の抑制効果を認めた」と結論し、「liraglutideは既存薬とは異なる作用機序を有し、減量効果も高く、肥満の糖尿病前症で有効な可能性が示唆される。一方、体重減少そのものよりも心血管イベントとの臨床的関連が強いと考えられるリスク因子の改善効果が示されたものの、長期的なリスク-ベネフィットのプロフィールや体重維持能が確立されたわけではない」と考察している。
Astrup A et al. Effects of liraglutide in the treatment of obesity: a randomised, double-blind, placebo-controlled study. Lancet. 2009 Nov 7;374(9701):1606-16. Epub 2009 Oct 23.


13.【症例報告】呼吸器異常例は、呼吸苦、SpO2低値、消化器症状、白血球の顆粒球増多が特徴的
日経メディカル2009年11月19日

新型インフルエンザの患者増に伴い、呼吸器障害を呈する症例が目立ってきた。日本臨床内科医会インフルエンザ研究班のメンバーである廣津医院(川崎市)の廣津伸夫氏によると、呼吸器異常例では、呼吸苦、SpO2低値、消化器症状、白血球の顆粒球増多が特徴的だという。廣津氏に、呼吸器異常を示した症例の特徴についてうかがった。
<症例1> 6歳 男性 小学1年生 体重18.8kg 喘息様気管支炎の既往
10月2日
5:00 38.5% 腹痛 嘔吐 咳は前日よりあり
10:00 来院 白血球(WBC) 8400/cmm 顆粒球(GRA) 80.8% C反応性蛋白(CRP) 0.2mg/dL
    感染性胃腸炎と診断 帰宅
13:30 嘔吐あり再来院 迅速診断法で陽性 補液開始
    嘔吐 喘鳴があるためペラミビル治験開始
    治験終了後に呼吸窮迫
    呼吸数(RR)50回/分 脈拍(pulse)160回/分  酸素飽和度(SpO2)88%
    国立成育医療センターに救急搬送 胸部XPにて両肺下野肺炎像 CRP 1.8mg/dL
6日間の入院加療で退院
 症例1は、インフルエンザ患者のうち子どもの症例が少ない時期の患者だった。早朝に38.5℃の発熱、腹痛と嘔吐があり、来院した。咳は前日からあったという。腹痛および嘔吐があり、炎症の所見も見られたことから、感染性胃腸炎と診断し、帰宅となった。
 嘔吐があったため、その日の午後1時半に再び来院。インフルエンザが疑われたため迅速診断キットによる検査を実施したところ、陽性だった。補液を始める一方、嘔吐と喘鳴があるため治験薬の抗インフルエンザ薬ペラミビルによる治療を開始した。治験の終了後に呼吸窮迫を認め、RR 50回/分、pulse 160回/分、SpO2 88%となったことから、国立成育医療センターに救急搬送した。センターでは、胸部XPで両肺下野肺炎像が確認された。
 腹痛や嘔吐などの消化器症状があり、また、症状が急速に悪化した点が特徴的だった。なお、この症例は6日間入院加療し、退院となっている。
<症例2> 6歳 男性 幼稚園年長児 体重21.5kg アセトン血性嘔吐症の既往
10月7日
6:00 37.8℃ 嘔吐 咳は前日よりあり
10:00 来院 38.6℃ 脱水認め排尿なし 補液開始
    WBC 8200/cmm GRA 87.6% CRP 0.7mg/dL 迅速診断法で陽性 リレンザ吸入
13:00 補液終了後嘔吐 呼吸苦あり RR 42回/分 pulse 136回/分 SpO2 94%
    国立成育医療センターに救急搬送 胸部XPにて気管支影増強 CRP 1.6mg/dL
    補液後 RR 30回/分 SpO2 99%に改善し帰宅
 症例2は、川崎市でも流行が拡大した時期の患者だ。早朝に37.8℃の発熱と嘔吐があった。咳は前日からあったという。
 その日の10時に来院。体温は38.6℃で、脱水認め、排尿はなかった。このため補液を開始した。迅速診断法で陽性となり、リレンザによる治療となった。
 同日午後1時。補液終了後に嘔吐があった。呼吸苦も認め、RR 42回/分、pulse 136回/分、SpO2 94%であったことから、国立成育医療センターに救急搬送となった。センターでは、胸部XPで気管支影増強が確認された。補液後にRR 30回/分、SpO2 99%に改善したことから帰宅となった。
 中高生を中心とした感染が小学校の子どもたちの間にも広がってきていた。このため、発熱、嘔吐、咳の症状から、インフルエンザを疑った事例だった。咳は前日からみられていたが、発熱、嘔吐から始まり、急速に症状が悪化した点が特徴だった。
<症例3> 9歳 女性 小学4年生 既往なし
10月7日
1:00 38.0℃ 腹痛 前日より咳あり
13:30 来院 WBC 11200/cmm GRA 92.2% CRP 5.3mg/dL
    迅速診断法で陽性 RR 36回/分 SpO2 93%
    国立成育医療センターに救急連絡し受け入れ態勢は整っていたが、搬送前にSpO2 97%と改善したため帰宅
    当日夜 呼吸器状態悪化し、嘔吐あり 救急入院 SpO2 89% 肺炎
10月11日
    SpO2 97% 呼吸管理中止
 症例3は、症例2と同じ日に来院した患者だ。夜中に38℃の発熱があり、腹痛も認めた。咳は前日からあった。午後1時に来院。インフルエンザの流行を前提とし、迅速診断キットで検査を実施したところ陽性となった。RR 36回/分 SpO2 93%と重症化の懸念があったことから、国立成育医療センターに救急連絡した。
 ただし、搬送前にSpO2 97%と改善したため帰宅となった。ところが、当日夜に呼吸器状態が悪化し、嘔吐もあったため、救急入院となった。搬入先の病院でSpO2 89%、肺炎と診断された。
 この日は、症例2と同時刻の来院となり、一人は診察室、一人は処置室と、パルスオキシメータをかかえて走り回る大変な日となったという。国立成育医療センターに救急連絡しておきながら、搬送前にSpO2 97%と改善したため帰宅としたことに、「同時に2人を搬送するには、搬送先の大変さを思うと遠慮が先に立った」(廣津氏)と述懐する。
 廣津氏によると、呼吸器異常例の特徴としては、呼吸苦、SpO2低値(95%未満)、消化器症状が挙げられ、白血球中の顆粒球増多やCRPの高値も重症化の指針となるという。急速に悪化することが少なくなく、注意深い観察が必要となる。特に10歳以下の子どもでは、「元気がない」とみえる場合は、重症化を想定した対応を考慮すべきともいう。
<症例4> 6歳 男性 幼稚園年長児 体重21.0kg MCLSの既往
11月1日
13:00 37.8℃ 前日からの咳、嘔吐のため休日診療所へ
    迅速法陰性だったがタミフルが処方された。内服後2回とも嘔吐
11月2日
10:00 来院 WBC 10300/cmm GRA 86.2% CRP 6.0mg/dL
    迅速法陽性、RR 40‐50回/m SpO2 94-95%
    ラ音聴取なく一般状態は悪くなかったが国立成育医療センターに搬送
    入院時 SpO2 98%(酸素マスク4L/分)、胸部XPにてインフルエンザ肺炎と診断
11月5日
    経過良好にて退院

表1 重症患者を鑑別するための目安とする「1分間の呼吸数」
 最後の症例は、呼吸状態はさほど悪くは無かったが、呼吸苦、SpO2低値、消化器症状、顆粒球増多、CRPの高値が見られたため、悪化を予測し搬送した例で、前3症例の経験から学んだ効果と言える。
 廣津氏は、重症患者を鑑別するために「1分間の呼吸数を測定する」(表1)ことや、重症度を把握するための「新型インフルエンザ患者チェックリスト」などの活用も提案している(図1)。患者数が急増する中では、こうしたチェックリストを活用するなどして効率的に重症例を拾い上げることが求められる。同時に、重症者を受け入れる医療機関との連携も欠かせない。



14.プレスリリース

1) 理化学研究所、潰瘍性大腸炎の発症に関連する3つの遺伝子を発見

・難病の潰瘍性大腸炎の発症に関連する3つの遺伝子を発見
―遺伝的な要因を背景にした、粘膜免疫応答の調整異常が発症原因と突き止める―
◇ポイント
 ・日本人の潰瘍性大腸炎をゲノムワイドに解析、遺伝的素因の実態を初めて解明
 ・発見した3つの遺伝子の発症リスクは、それぞれ1.3~1.6倍
 ・潰瘍性大腸炎の発症に、腸管免疫の個人差が関与する可能性が明らかに
 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、潰瘍性大腸炎の発症に関連する3つの遺伝子(FCGR2A、13q12領域、SLC26A3)を発見しました。理研ゲノム医科学研究センター(中村祐輔センター長)多型解析技術開発チーム(久保充明チームリーダー)と、九州大学大学院病態機能内科学(飯田三雄教授)、東北大学大学院消化器病態学分野(下瀬川徹教授)、札幌医科大学医学部内科学第一講座(篠村恭久教授)との共同研究による成果です。
 潰瘍性大腸炎は、大腸に潰瘍やびらんができる原因不明のびまん性非特異的炎症性腸疾患の1つで、1975年に厚生労働省指定特定疾患(難病)に認定されています。2008年の国内患者数は、約10.4万人で、近年増加傾向にあります。これまでの研究から、潰瘍性大腸炎では、遺伝的素因を背景として、食餌や腸内細菌由来の抗原に対する粘膜免疫応答の調節異常が、発症に大きくかかわっていると考えられていました。
 今回、研究グループは、日本人の潰瘍性大腸炎患者1,384例と一般集団3,057例のサンプルを用いてゲノムワイド解析(※1)を行い、FCGR2A遺伝子、13q12領域、SLC26A3遺伝子の3つの遺伝子領域が、潰瘍性大腸炎の発症と関連することを発見しました。これらの遺伝子のリスク多型を持つ人では、FCGR2A遺伝子で1.6倍、13q12領域で1.35倍、SLC26A3遺伝子で1.3倍と、潰瘍性大腸炎発症のリスクが高くなっていることが分かりました。特に、FCGR2A遺伝子では、131番目のアミノ酸をアルギニンからヒスチジンに変える一塩基多型(SNP)(※2)との間に強い関連が見られ、このアミノ酸置換により免疫グロブリンIgGへの結合が強くなるため、FCGR2A遺伝子のヒスチジン型の人では、腸管免疫細胞の活動性が亢進し、大腸の炎症が起こりやすくなると考えられました。
 これらの結果は、潰瘍性大腸炎の発症に、個人の持っている免疫能の違いが関与していることを示しています。大腸粘膜におけるこれらの遺伝子の機能や、潰瘍性大腸炎の発症機序の解明が進むことで、潰瘍性大腸炎の新規治療法の開発につながることが期待できます。
 本研究成果は、米国の科学雑誌『Nature Genetics』に掲載されるに先立ち、オンライン版(11月15日付け:日本時間11月16日)に掲載されました。
■背景
 潰瘍性大腸炎は、大腸に限局した病変をきたす疾患で、主に粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性非特異的炎症性腸疾患です。治療には、薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、副腎皮質ステロイド剤、免疫抑制剤)や手術療法、血球成分吸着除去療法などの寛解導入療法(※3)を行いますが、多くの症例で再発を繰り返します。また、長期化すると大腸がんの発生率が高いことが知られています。1975年に厚生労働省が指定特定疾患(難病)に認定した疾患で、2008年の国内の患者数は10.4万人です。患者数は、最近10年間でほぼ倍増しており、増加傾向にありますが、詳細な原因は分かっていません。同じ炎症性腸疾患のクローン病(※4)とともに、遺伝性素因を背景として、食餌や腸内細菌叢由来抗原などに対する腸管粘膜の免疫調節機構の異常が発症と深くかかわっていることが推測されています。
■研究成果と手法
 非特異的炎症性腸疾患であるクローン病と潰瘍性大腸炎は、ともに家族内発症が多いことから遺伝的素因の関与が強く示唆されていました。クローン病では、家系を用いた連鎖解析や最近のゲノムワイド解析によって30個以上のクローン病関連遺伝子が報告されています。しかし、潰瘍性大腸炎ではあまり研究が進んでおらず、これまでに欧米人の潰瘍性大腸炎について2つの報告が見られるだけでした。また、欧米人で見つかったクローン病の関連遺伝子は、日本人のクローン病患者では関連が認められず、炎症性腸疾患の遺伝的素因には明らかな人種差が存在することも知られていました。
 研究グループは、日本人における潰瘍性大腸炎の関連遺伝子を見つけるため、九州大学が収集した潰瘍性大腸炎患者749名と一般対照群2,031名を対象に、ゲノム医科学研究センターの高速大量タイピングシステム(※5)を用いて、2007年12月より2段階スクリーニング法によるゲノムワイド解析を実施しました。解析を進めたところ、以前より関連が示唆されていた6番染色体のHLA領域(※6)に欧米人よりも強い関連のある領域が見つかるとともに、それ以外にも複数の候補領域が見つかりました。これらの候補領域について、東北大学が収集した潰瘍性大腸炎患者259名、一般対照群650名、および札幌医科大学が収集した患者376名、一般対照群376名を用いて、関連の再現性を検討したところ、1番染色体上のFCGR2A遺伝子(※7)内のSNP(rs1801274)、7番染色体上のSLC26A3遺伝子近傍のSNP(rs2108225)、13番染色体の13q12領域のSNP(rs17085007)の3カ所の領域が潰瘍性大腸炎と強く関連していることが分かりました。それぞれのSNPにおける潰瘍性大腸炎発症のリスク(オッズ比)は、FCGR2A遺伝子で1.59倍、SLC26A3遺伝子で1.32倍、13q12領域で1.35倍となっていました。
 特に、FCGR2A遺伝子上のSNP(rs1801274)は、遺伝子産物であるFcγRIIaタンパク質の131番目のアミノ酸をアルギニンからヒスチジンに置換するSNPでした。このアミノ酸置換によって、FcγRIIaの免疫グロブリンIgGへの結合が強まることがすでに知られており、FCGR2A遺伝子のヒスチジン型を持つ人では、FcγRIIaを介した免疫反応やサイトカイン産生が亢進するために腸管粘膜の免疫調節異常が引き起こされる可能性が考えられました。また、SLC26A3遺伝子の遺伝子産物は、大腸粘膜に存在する膜タンパク質で、塩素イオン(Cl-イオン)を再吸収し、炭酸水素イオン(HCO3-)を排出するトランスポーターとして知られています。潰瘍性大腸炎患者ではSLC26A3タンパク質の発現が低下しており、SLC26A3遺伝子の変異により先天性の下痢を引き起こすことが報告されています。今回の解析結果で、SLC26A3遺伝子の発現を調節する領域(プロモーター領域を含む)と潰瘍性大腸炎に強い関連が見られることから、この領域にSLC26A3遺伝子の発現を減少させるSNPが存在し、潰瘍性大腸炎の発症に寄与することが推測できました。
■今後の期待
 今回の発見により、潰瘍性大腸炎の発症にはHLA遺伝子やFCGR2A遺伝子による免疫能の個人差が大きくかかわっていることが分かりました。HLA遺伝子やFCGR2A遺伝子が、腸管粘膜での免疫調節機構で、どのような役割を担っているのか、また、複数の潰瘍性大腸炎関連遺伝子がどのように組み合わさって機能しているのかを調べることで、炎症性腸疾患の病態解明が進むと考えられます。さらに、これらの研究により腸管粘膜での免疫調節機構が明らかにすることができると、潰瘍性大腸炎に対する新たな治療法の開発につながることが期待できます。
<補足説明>
 ※1 ゲノムワイド解析
  遺伝子多型を用いて疾患と関連する遺伝子を見つける方法の1つ。ある疾患の患者(ケース)とその疾患にかかっていない被験者(コントロール)の間で、多型の頻度に差があるかどうかを統計的に検定して調べる。ゲノムワイド解析では、ヒトゲノム全体を網羅するような50~100万カ所のSNPを用いて、ゲノム全体から疾患と関連する領域・遺伝子を同定する。
 ※2 一塩基多型(SNP:Single Nucleotide Polymorphism)
  ヒトゲノムは約30億塩基対からなるとされているが、個々人を比較するとその塩基配列には違いがある。この塩基配列の違いのうち、集団内で1%以上の頻度で認められるものを多型と呼ぶ。遺伝子多型は遺伝的な個人差を知る手がかりとなるが、最も数が多いのは一塩基の違いであるSNPである。多型による塩基配列の違いが遺伝子産物であるタンパク質の量的または質的変化を引き起こし、病気のかかりやすさや医薬品への反応の個人差をもたらす。
 ※3 寛解導入療法
  病気の症状が軽減・消失し、安定した状態である完全寛解を導くための治療法のこと。
 ※4 クローン病
  潰瘍性大腸炎と同じ非特異的炎症性腸疾患の1つ。1932年にニューヨークのマウントサイナイ病院の内科医クローン医師らによって限局性回腸炎として初めて報告された。クローン病は潰瘍性大腸炎と異なり、口腔から肛門に至るまでの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍(粘膜が欠損すること)が生じる。また、潰瘍性大腸炎は連続性の病変であるが、クローン病は非連続性の病変であること(病変と病変の間に正常部分が存在すること)が特徴。症状は、潰瘍性大腸炎と同様、腹痛や下痢、血便、体重減少。潰瘍性大腸炎とともに厚生労働省の特定疾患に指定されている。
 ※5 高速大量タイピングシステム
  遺伝子型の決定(ジェノタイピング)を高速、かつ大量に行うシステム。現在、ゲノム医科学研究センターでは、イルミナ社のインフィニウム法と理研が独自に開発したマルチプレックスPCRを併用したインベーダー法の2つのタイピングシステムを用いてゲノムワイド解析を行っている。
 ※6 HLA領域
  ヒトの6番染色体短腕(6p21)上に存在し、その領域にはHLA遺伝子群を含む多数の遺伝子が存在する。HLA遺伝子群は、自己と非自己の認識、免疫応答の誘導に関与するヒト白血球型抗原(Human Leukocyte Antigen)をコードしている。MHC(major histocompatibility complex;主要組織適合性複合体)領域とも呼ばれる。
 ※7 FCGR2A遺伝子
  IgGが機能を発揮する上で重要なFcレセプターの1つ。FCGR2A遺伝子産物であるFcγRIIaは主にマクロファージ・樹状細胞に発現しており、IgGと結合することにより抗原提示やサイトカイン産生に関与している。今回の研究により、潰瘍性大腸炎では、FCGR2A遺伝子の131番目のアミノ酸がアルギニンからヒスチジンに置換されることによりリスクが上昇することが明らかとなった。一方、自己免疫疾患の1つである全身性エリテマトーデス(SLE)では、同じ131番目のアミノ酸がアルギニン型の方がSLEの腎障害(ループス腎炎)を起こしやすいことが報告されている。この逆の関連は、ヒトの免疫調節機構とそれに関連する疾患を理解する上で重要な知見と考えられる。




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